契約前の期待値合わせ

契約前に期待値を合わせるには?|できる・できない・条件付きを一枚にする

できる、できない、条件付きの三つを同じ一枚にまとめ、相手と読み合わせて期待をそろえる図。
できる・できない・条件付きを同じ一枚に並べ、相手と読み合わせて直します。

読了目安 約11分 · 公開 · 更新

契約前の期待値合わせは、できること・できないこと・条件付きでできることを同じ一枚に並べ、決める前に相手へ読み合わせてもらう仕事です。読むのは相手で、違う箇所は相手の言葉のまま書き直します。「善処します」「基本的には」は、誰が・いつ・何を満たせばそうなるかの条件へ置き換えます。条件が合わなければ契約しない選択を、読み合わせの前に伝えます。

持ち帰る一言

できないことを、決める前に同じ一枚へ。読むのは相手

10秒で答え|契約前の期待値は、できる・できない・条件付きの一枚で合わせる

期待値合わせというと、相手の期待を下げる作業に聞こえます。ここで扱うのは違います。下げるのではなく、営業が説明した内容と、相手が受け取った内容の差を、決める前に同じ紙の上へ出す作業です。

一枚に載せるのは三つだけです。追加の条件なしにできること。契約の範囲外でできないこと。何かが揃えばできる、条件付きのこと。この三つを別々の資料に分けると、相手はできることの資料だけを持って社内へ戻ります。

向く相手 向かない相手
導入後に複数の部署が関わる。決める人と使う人が違う。過去に「聞いていた話と違った」経験がある まだ候補を絞っていない段階の人。課題も条件も聞けていない初回。社内で検討が始まっていない相手

向かない相手に出すと、要らない条件を数えさせることになります。何に困っているかを先に聞く段階なら「営業ヒアリングの質問」へ、支援と操作の線引きは「営業心理学は操作になる?」へ戻ってください。

契約前に期待値がずれる仕組み|同じ言葉が違う実物を指している

ずれは、嘘をついたから起きるとは限りません。「すぐ」「柔軟に」「標準で」「だいたい同じ」といった言葉を、営業側は自社の運用で読み、相手は自社の業務で読みます。同じ一語が、二つの違う実物を指したまま合意されます。

契約後に「思っていたのと違う」が出てくるのは、その差が実物として現れる時点が、決めた後だからです。しかも買った後は、相手も自分の判断を守る方へ気持ちが動きやすくなります。この仕組みは「認知的不協和」が所有します。編集室の立場は、後悔を打ち消させることではなく、訂正できる状態にしておくことです。

決める前に同じ一枚を読めば、ずれは訂正になります。決めた後に見つかると、同じずれが苦情に変わります。作業量はほとんど変わりません。違うのは、相手が費用と時間を先に払っているかどうかです。

物語「三週間後の解約」は、「説明済み」と書きかけた返信を消し、役割ごとの理解差を数え直す場面を描いています。

契約前に渡す一枚の書き方|できる・できない・条件付き

三つの見出しを、同じ紙の同じ面に置きます。量はそれぞれ五行までを目安にし、今回の判断に要らない項目は載せません。

できること

  • 契約の範囲に入っていて、追加の条件なしに提供できることだけを書く。
  • 自社の機能名ではなく、相手の業務が何になるかで書く。「一括取込に対応」ではなく「毎月の手入力がファイル一つの取込になる」。
  • 使い始められる時期を添える。契約日と開始日が違うなら、その差も書く。

できないこと

  • 契約範囲外、仕様上できない、今期は対応予定がない。この三つは意味が違うので、分けて書く。
  • 「対応していません」で止めず、代わりに取れる方法があれば一行だけ添える。代替がなければ「代替はありません」と書く。
  • 不向きな用途と、そこで起きることも書く。書き方の型は「商品のメリット・デメリットはどう伝える?」、リスクの説明順は「営業でリスクはどう説明する?」が所有します。

条件付きでできること

  • 何が揃えばできるのかを、誰が・いつ・何を、の形で書く。
  • 揃わなかった場合にどうなるかを、同じ行に書く。ここを空けると、相手は「たぶん揃う」と読みます。
  • 追加費用や追加期間が発生するなら、金額を確定できない段階でも「発生する条件」だけは先に書く。

自分の権限で決められない項目は、条件付きにも入れません。「私の判断では決められないこと」という四つ目の短い欄を作り、誰に、いつまでに確認して返すかを書きます。確約できない時の伝え方は「接客で「確約できない」とどう伝える?」が扱います。

読み合わせで契約前の期待値を合わせる|「善処します」を条件の言葉へ

一枚を作っても、曖昧な言い方が残っていれば読み合わせは通り過ぎます。先に、言い換えの型を持っておきます。

曖昧な言い方 条件を入れた言い方
善処します この件は私の判断では決められません。10日までに担当部署へ確認し、可否をお返しします
基本的には対応できます AとBの条件なら契約の範囲です。Cは範囲外で、個別の見積になります
おそらく間に合います 発注が10日までなら標準の納期です。それ以降は、標準より遅れる日数をお伝えします
柔軟に対応します 変更は月1回まで、5営業日前のご連絡で受けられます
だいたい同じです 違うのは2点です。入力画面と権限設定が変わります
すぐ使えます 初期設定は当社が行います。御社側の作業は、利用者の登録と権限の割り当てです
前向きに検討します 今は判断できません。持ち帰って、10日に可否をお伝えします
問題ないと思います その条件では、まだ確認できていません。確認してからお答えします

置き換えの目的は、丁寧に聞こえる言い方を覚えることではありません。相手が社内で説明できる材料を一つ増やすことです。条件の言葉にしても中身を確認していなければ、ずれはそのまま残ります。

読み合わせは、次の順で進めます。

  1. 契約を決める日の前に、一枚を渡す。その場で初めて見せない。
  2. 読むのは相手。営業が読み上げると、営業の理解のまま流れます。「御社の業務と違うところを教えてください」と言って待ちます。
  3. 違うと言われた箇所を、相手の言葉のまま書き直す。自分の言い方へ戻しません。
  4. 書き直した一枚を、決める人が見られる形にする。同席していない人が読む前提で整えます。
  5. 決めるのは、その後です。

訂正が一つも出ない読み合わせは、合っていたのではなく、読まれていない可能性があります。「全部合っています」と返ってきたら、条件付きの行を一つ選んで「この条件は、御社ではどなたが確認されますか」と聞き直します。

会話例|ミナトが二度目に直した一枚

ミナトが編集室へ持ち込んだ商談記録です。顧客名と価格は外してあります。契約前の打ち合わせで、相手の担当者が「この辺りは柔軟に対応してもらえるんですよね」と確認し、ミナトは「はい、善処します」と答えました。契約から一か月後、相手の現場から「聞いていた運用と違う」と連絡が入りました。

ミナト

「善処します」は、断らないための言葉でした。僕はその場で決められなかったのに、決められないと言えませんでした。

今は、できないことと、条件付きのことを先に一枚へ書いています。この前は「これは私では決められません。18日に可否をお返しします」と言いました。相手は、その場で社内の確認担当を教えてくれました。

変わったのは誠実さの度合いではなく、どの時点で言うかです。決める前の「決められません」は条件の確認になり、決めた後の「できません」は訂正の要求になります。

期待値合わせが逆効果になる条件と、やめる合図

一枚を作ること自体が目的になると、読み合わせは形式になります。次のどれかが起きたら、確認へ戻ります。

  • 期待を上げたまま契約へ進んでいる。 できることを話し終えてから、できないことを「念のため」として最後に足している。順番が逆です。
  • 一枚が長い。 免責事項の羅列は読み合わせではありません。読まれない分量は、伝えていないのと同じ扱いになります。
  • 相手が社内向けに言い換え始めた。 「つまり全部込みということですね」のような要約が出たら、止めて文言を確かめます。「その表現で社内へ出ますか。私の言い方と違うところを直させてください」と返します。
  • 「ここは大丈夫だと思います」で読み飛ばされた。 大丈夫の根拠が相手の推測なら、条件付きの行へ戻ります。
  • 訂正された内容を、営業側の記録で上書きしている。 自分のメモを正しい版にしてしまうと、一枚を作った意味がなくなります。
  • 曖昧語を条件語に置き換えただけで、中身を確認していない。 言い換えは確認の代わりになりません。

やめる合図が出た時にすることは、説明の追加ではなく、確認の再開です。急いで納得してもらう方向へ進むと、開始後に同じ条件が戻ってきます。

この記事の3点

  • 判断が進む条件:できる・できない・条件付きを同じ一枚に置き、決める日の前に渡して、読むのは相手にしてもらう。訂正された言葉をそのまま残す。
  • やめる合図:できないことを最後に足している。相手が社内向けに言い換え始めた。「大丈夫だと思います」で読み飛ばされた。訂正を自分の記録で上書きしている。
  • 相手の出口:「合わなければ見送りで構いません」「条件付きの項目を外した形も出せます」「読む時間は御社で置いてください」を、読み合わせの前に言っておく。

相手の出口|条件が合わなければ契約しない選択を残す

出口は、相手が困ってから探すものではなく、一枚を渡す前に営業側が言葉にしておくものです。

出口 読み合わせの前に言っておくこと
契約しない 「読んだ結果、条件が合わなければ今回は見送りで構いません。理由も伺いません」
範囲を減らす 「条件付きの項目を外した形でも出せます。その場合に変わるのは、この行です」
期日を延ばす 「社内で読む時間が要るなら、日程は御社の都合で置いてください」
決めた後に直す 「開始後に変えられる範囲と、変えられない範囲は、この欄に分けてあります」

四つの出口が実際に残っているかは、情報・理由・時間・出口の四条件として「自己決定感」で点検できます。

契約が決まった後は、この一枚がそのまま引き継ぎの材料になります。相手が期待した変化と条件付きの項目を、受け取る側が自分の言葉で再説明できる形にして渡す手順は「営業からCSへ何を引き継ぐ?」が所有します。本稿の範囲は、契約を決める前までです。

編集室がこの一枚を勧めるのは、成約率のためではありません。物語「売れた数字のあとに残った声」では、申込は伸びたのに、顧客に「もう少し比べたかった」が残りました。編集室はその日から、成果と納得を別に記録しています。

今日の一手

次の商談の前に、次に出す見積か提案へ「できないこと」を三行だけ足してください。契約範囲外、仕様上できない、今期は対応予定がない。この三つから、今回の相手に関係するものを選びます。

そのうえで、相手に渡す時に一言添えます。「読んで、御社の業務と違うところを直してください。合わなければ見送りで構いません」。訂正が返ってきたら、その言葉のまま書き直してください。

よくある質問

できないことを先に出すと、契約が決まらなくなりませんか?

決まらない契約はあります。ただし決まらなかったのは、条件が合っていなかったからです。できないことを伏せて決めた契約は、開始後に同じ条件の話へ戻り、そこでは相手が費用と時間を先に払っています。一枚を先に出すと、相手は「この条件なら進める」「ここが外れるなら見送る」を自分で選べます。見送られた場合も、何が合わなかったかは次の提案の材料として残ります。

読み合わせの時間が取れない相手には、どうすればよいですか?

一枚を先に送り、読む時間を相手に置いてもらいます。その場で全部を読ませようとすると、相手は「大丈夫だと思います」で流しやすくなります。短時間しか取れない時は、条件付きの項目だけを読んでもらい、できること・できないことはメールに残して「違う箇所があれば直してください」と添えます。返事がないことを、合意として扱いません。

口頭で伝えた内容と、契約書の文言が違う時はどうしますか?

その場で契約書を解釈せず、違いがあることを相手と自分の両方が分かる形で残し、契約・法務の担当部署へ戻します。営業の説明が契約書の内容を置き換えることはないため、「口頭ではこう言った」で進めません。どちらが正しいかの判断は自分で決めず、正式な文書での確認結果を相手へ返す日を先に伝えます。

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