営業の数字は、値・比較対象・期間・分母・条件を同じ場所に置きます。前後で測り方が違えば直接比較せず、平均などの名称と欠測も示します。測れていない数字は埋めず、出所と次の確認方法・担当・期限を添えます。
ここでは、提案書・商談資料・口頭で数字を伝える時の表示を扱います。数字を大きくする前に、相手が何を比べられるかを確かめます。
営業の数字は五つの欄をそろえる

一つの数字を選び、次の五欄を近くへ置きます。
| 欄 | 数字の隣に書くこと |
|---|---|
| 値 | 単位、割合なら何件中何件か。丸めた場合はその方法。 |
| 比較対象 | 現在・過去・別案・何もしない案のどれか。 |
| 期間 | 集計の開始と終了。期間を選んだ理由。 |
| 分母 | 対象に含めた範囲と件数。対象外・未回答・欠測。 |
| 条件 | 業務・利用者・測定方法・同時に変わったこと。 |
資料で「母数」とだけ書くより、実際に数えた件数を書きます。五欄は長い説明を足す枠ではなく、比べられる数字か、参考か、まだ使えないかを確かめる枠です。
営業資料の数字は条件をそろえて比較する

前後を比べる時は、対象業務、期間、測定の開始・終了、除外・欠測を並べます。人員や案件の難しさなど、同時に変わったことも残します。
次は実在製品の成果ではない、架空の練習記録です。
| 五欄 | 架空例で書き直す内容 |
|---|---|
| 値 | 一件の確認時間の平均が30分から21分へ。差は9分、30%減。整数に丸めた値 |
| 比較対象 | 従来手順と、試行中の手順 |
| 期間 | 従来手順を10営業日、試行手順を別の10営業日 |
| 母数 | 各期間に完了した20件。未完了・欠測は別欄に残す |
| 条件 | 同じ担当範囲、同じ案件区分、開始から最終確認までを計測。繁忙度や差し戻し件数の違いは未確認 |
30分から21分への差は9分、30%です。ただし、繁忙度や差し戻しの違いが未確認なので、手順だけによる削減効果とは言えません。
条件をそろえて比べられるなら直接比較、違いを残して並べるなら参考比較、対象や測り方を照合できなければ比較不能と書きます。参考値を「御社でも30%削減」の約束へ変えません。
数字の隣へ条件を戻す編集室の場面
編集室で、ミナトは架空の業務記録を使った提案練習をしていました。資料の中央には「確認時間30%削減」とだけ大きく置かれています。
ミナト
細かい条件は次のページに入れました。最初は30%だけ見せた方が、伝わりやすいと思って。
カナエ
数字を小さくする必要はありません。ただ、何と何を比べた30%かは、同じ場所で読めるようにしましょう。
期間、何件中何件、測り方が違うなら、先にその差を止めます。
この例は、数値表現を点検するための架空の練習記録です。実在製品や企業の効果ではありません。
ミナトは30%を消すのでなく、数字の下へ四つの条件と未確認を戻しました。カナエも、その資料で理解や信頼が高まったとは決めません。受け手が条件を訂正できる形になったかだけを確認します。
費用と効果の算定、下振れ・基準・上振れを含む投資判断は「営業のROI説明」へ分けます。
営業の数字で最大・平均・中央値を使い分ける

見栄えのよい値を選ぶ前に、何を確かめたいかを決めます。
| 表示 | 表すものと、単独では見えないこと |
|---|---|
| 最大値 | 観測した中で最も大きい値。通常の一件を表すとは限らない。 |
| 平均値 | 合計を件数で割った値。一部の大きな値に影響され、ばらつきは分からない。 |
| 中央値 | 小さい順の中央。偶数件なら中央二値の平均。合計量や最大の負担は分からない。 |
架空の所要時間が 10・10・10・10・60分なら、平均20分、中央値10分、最大60分です。中央値だけで60分の一件を隠さず、名称・件数・範囲も添えます。定義は総務省統計局の解説で確認できます。
営業活動でどの指標を追うかは「営業KPIの例と設定方法」の範囲です。
営業の割合は分母と未完了も見せる

架空の受付20件のうち18件が完了したなら、完了率90%と未完了2件は同じ全体の情報です。完了した18件だけを抜き出すと18件中18件になりますが、対象20件の結果とは違います。
未完了と欠測は別欄に残します。 欠測は結果が分からない状態で、ゼロ・完了・未完了の実測に置き換えません。割合を比べる時は分母の件数だけでなく、誰と何を数えたかも確かめます。
良い期間だけを切り出したり、最大値を通常の結果に見せたりしないようにします。丸め方、グラフの軸・単位・基準点・系列も確認し、必要なら小さな表を添えます。
表し方で注意が向く側を扱う定義は「フレーミング効果」、他社事例の条件は「導入事例の話し方」へ分けます。
営業の数字は口頭でも出所を添える

口頭でも、資料にある条件を落とさず伝えます。次は数値表現を点検する架空例です。
| 数字だけの言い方 | 条件を戻す言い方 |
|---|---|
| 「確認時間が30%減りました」 | 「各20件の平均は30分と21分でした。条件差があり、同じ効果を約束する数字ではありません」 |
| 「90%が完了しました」 | 「対象20件中18件です。未完了2件も同じ記録に残しています」 |
| 「導入200社です」 | 「集計期間と対象が未確認なので、いまは実績として使いません。原記録を確認します」 |
その場で出所へ戻れなければ説明を止め、確認者と期限を伝えます。相手の条件を聞く順序は「営業ヒアリングの質問」、不利な条件を話す手順は「メリット・デメリットの伝え方」が扱います。
営業で数字が未確認なら次の測定を決める

望んだ差が出なくても、強い形容詞や都合のよい指標へ変えません。次の四つを分けます。
- 確認済み: 測れた値とその範囲。
- 条件差: 比較を弱くする人・業務量・期間・測定方法などの違い。
- 未確認: 測れていない値、欠測の件数と理由。
- 次の測定: 何を、誰が、いつ、何件、どの方法で確かめるか。
予測・他社の結果・顧客の実測は別のものです。未確認を埋めず、必要な確認が終わるまで何の判断を止めるかも決めます。物語「止めることも前進」では、この止め方を描いています。
営業の数字を見せる前のチェックシート

数字と条件
値・単位・丸め/比較対象/期間/分母・欠測/対象・除外・測定方法
比較と原記録
前後で違う条件/直接比較・参考比較・比較不能/見えにくくなった残り側/原記録・確認者・更新日
次の確認
未確認の項目/方法/担当/期限/確認まで止める判断
数字を隠して条件だけを読んでみます。何を比べたか言えない、分母や測り方を照合できない場合は、数字を大きくする前に原記録へ戻ります。
今日の一手: 次の資料で最も大きく表示している数字を一つ選び、比較対象・期間・分母・条件を一行ずつ添えましょう。未確認の欄には、確認する人と期限を残します。
よくある質問
営業資料の数字は、何と比較すればよいですか?
相手が判断したい問いに合わせ、現在の方法、何もしない場合、別案、導入前の同じ業務などから比較対象を選びます。業界平均や他社事例を使うなら、今回と対象・期間・測定方法が違うことを示し、自社で同じ結果が出る基準値にはしません。比較元がない時は、無理に削減率を作らず現状測定から始めます。
割合の母数は、どこまで書けばよいですか?
少なくとも何件中何件か、対象に入れた条件、対象外、未回答・欠測を数字の近くへ置きます。本記事では実務上の言い方として母数と呼びますが、割合を計算した分母や計測件数を具体的に書く方が誤解を減らせます。分母が違う二つの割合を、そのまま大小比較しません。
最大値・平均値・中央値は、どれを営業資料に使いますか?
一つを常に正解にせず、最大値は観測した上限、平均値は合計を件数で割った値、中央値は小さい順に並べた中央として、何を確かめる数字かで選びます。名称、対象件数、範囲を示し、最大値だけを通常の結果に見せたり、中央値だけで大きな遅れを隠したりしません。
社内資料と顧客向け資料で数字を変えてもよいですか?
同じ根拠の桁数や表示順を、読み手の判断に合わせて調整することはできます。ただし、分母、期間、除外、単位、集計方法を変えたのに同じ数字として見せたり、不利な条件を顧客向けだけから外したりしません。丸める場合は丸め方を決め、原記録へ戻れるようにします。
グラフで数字を見せる時は、何に注意しますか?
値・比較対象・期間・母数・条件をグラフの近くに置き、軸、単位、基準点、系列、欠測を確認します。軸を途中から始める必要がある場合は範囲と理由を示し、差の形だけを強調しません。小さな表を併記した方が値を確かめやすいなら、グラフだけにしません。
効果をまだ測れない時は、どう伝えますか?
測定済みの結果として埋めず、予測、他社事例、未確認を分けます。何を、誰が、いつ、どの方法で測れば次に判断できるかを示し、それまでは削減率を断定しません。投資判断に使う場合は、費用と効果の前提、下振れ・基準・上振れ、効果が出ない時の上限を別途そろえます。
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