失注分析は、確認できた情報と原因の仮説を分け、受注案件とも比べて、次に確かめる行動を決める作業です。「価格負け」と一行にまとめる前に、結果通知・顧客の言葉・当時の記録を並べます。
まず、結果通知にある照会・異議などの期限と、記録の保存・共有条件を確認してください。正式な手続きや保全が必要なら、自社の担当部門への連絡を先に行います。敗退直後の確認はコンペで負けた後の手順にもまとめています。
失注分析テンプレート|記録する10項目

分析用のシートに、次の欄を用意します。これは編集部が整理した記録例です。分からない欄は「未確認」と書き、確認先を残します。
| # | 項目 | 記録する内容 |
|---|---|---|
| 1 | 対象・分析ID | 案件、期間、商材、顧客層、分析の目的 |
| 2 | 結果と手続き | 暫定か確定か、確認日時、先に守る期限と担当 |
| 3 | 正式な事実 | 結果通知、採点、開示された理由、出所と開示条件 |
| 4 | 顧客の発言 | 原文、日時、発言者、場面、任意の回答か |
| 5 | 当時の自社記録 | 質問、提案、見積、参加者、変更履歴 |
| 6 | 時系列の分岐点 | その時に分かっていたこと、未確認事項、取った行動 |
| 7 | 原因の仮説 | 価格、要件、体制、時期など、考えられる原因 |
| 8 | 支持・反証・不明 | 仮説を支える材料、反する材料、分からないこと |
| 9 | 比較条件・欠測 | 受注案件も含む件数、対象条件、未取得の情報、分類ルール |
| 10 | 次の検証 | 対象、変える行動、見る項目、守る条件、担当、見直す時点 |
CRMの理由ラベルは、後から案件を探すために使います。「価格」を選んだだけで原因や改善策まで決めず、根拠を別欄に残しましょう。分類を変えた場合は変更日と扱いを記録し、変更前後の割合をそのまま比較しません。
失注分析のやり方|事実・発言・記録・仮説を分ける

「価格で負けた」という記録を見つけたら、その言葉がどこから来たのかを確認します。以下は架空の記入例です。
| 欄 | 記入例 | ここからは言えないこと |
|---|---|---|
| 正式な事実 | 結果通知に、価格点と機能点の記載がある | 価格だけで決まった |
| 顧客の発言 | 商談中に「予算内に収まるか確認したい」と言われた | それが最終的な選定理由だった |
| 当時の記録 | 最終見積で範囲を変更したが、要件対応表は未更新だった | その変更が失注を起こした |
| 原因の仮説 | 提供範囲と価格条件が合わなかった可能性 | 仮説が確定している |
発言には日時と場面を、資料には出所を添えます。提案・見積変更・結果通知を時系列に並べ、後から考えたことは当時のメモに混ぜません。
例えば「途中で関心が薄れた」と書くより、「回答予定が8月5日から12日に変わった。理由は未確認」と残すほうが、後から確かめられます。結果を知ってから過去が当然に見えることは、後知恵バイアスの解説でも扱っています。
失注原因の分析例|「価格負け」に反する材料も残す

一つの情報から複数の説明が考えられるなら、仮説を分けます。先ほどの架空例では、次の二つが候補です。
| 仮説 | 支える材料 | 反する材料・不明点 | 次に確認すること |
|---|---|---|---|
| 価格条件が合わなかった | 価格評価の記載がある | 機能にも不足がある。各評価が結果へ与えた影響は不明 | 開示範囲内で評価項目を確認する |
| 必須要件の理解にずれがあった | 見積変更後、要件対応表が未更新 | 提出前レビューでは適合と判断していた | 変更後の見積と要件対応表を照合する |
反証とは、自分の仮説が違うかもしれないと示す材料です。「価格で負けた」と考えていても、価格以外の不足を消さずに残します。反する材料が見つからない場合も、「仮説が正しい」ではなく「まだ見つかっていない」と記録できます。
仮説に合う情報だけを拾っていないかを確かめる視点は、確証バイアスの解説へ。担当者の性格やセンスを原因名にせず、確認できる行動と情報を分析の対象にします。
失注分析の集計|受注案件と母数・未確認を比べる

失注案件だけを見ると、受注案件にもある特徴を敗因だと思い込むことがあります。同じ期間・商材・顧客層・案件化の条件で、受注と失注を並べます。対象を途中で変えたら、変更前の集計と分けてください。
次は、決裁者との面談記録を比べた架空例です。
| 面談の記録 | 失注10件 | 受注10件 |
|---|---|---|
| 未面談と確認できた | 6件(全10件の60%) | 6件(全10件の60%) |
| 面談したと確認できた | 2件 | 2件 |
| 記録がなく不明 | 2件 | 2件 |
この例では「失注の6割が未面談」だけを根拠に、未面談が失注の原因だとは言えません。受注側も同じ割合です。一方、この20件だけで「面談は関係ない」と結論することもできません。
記録のない2件は、未面談へ足しません。このような欠測(必要な情報が得られていないこと)を別に数え、割合には分母を添えます。理由を複数選べる集計なら、割合の合計が100%を超える場合があることも示します。
比較前には価格帯、提案経路、商談期間などの違いも確認します。少数例を全体の傾向へ広げず、予算・人事評価・価格変更などの大きな判断に使う場合は、分析担当者と設計を見直しましょう。
失注分析を次に生かす|検証する行動を一つ決める

会議では10項目シートを見ながら、確かな情報と、まだ確かめたい仮説を整理します。「ヒアリングを強化する」で終えず、誰が何を試し、何を記録して、いつ見直すかまで決めましょう。
架空の記録例:次の同種3案件で、提出前に別担当者が最終見積と要件対応表を照合する。不一致と修正内容を残し、3案件の提出後に責任者と見直す。資料の閲覧・共有は社内ルールに従う。
3件はこの例の試行範囲であり、効果を証明するための件数ではありません。その後に受注できても、変更した行動だけが理由とは限らないため、結果を次の記録に加えます。
3分で試す失注分析
一案件を選び、「今の仮説」「それに反する材料、または未確認事項」「次に確かめること」を一行ずつ書いてください。顧客名や秘密情報を含まない自分の問いなら、商談ノートにも保存できます。正式な案件記録は、自社で認められた場所に残します。
日々の一商談を短く振り返るなら、営業の振り返り方を使えます。顧客へ理由を尋ねる場面は失注理由の聞き方、先に上司へ伝える必要がある場合は失注報告の方法へ進んでください。
原因を書く前に立ち止まったミナトの一言
ミナト
結果を知った後なら、何でも敗因らしく見えてしまう。原因を書く前に、当時分かっていたことと、今の解釈を分けます。
原因を言い切れなくても、次に確かめることは決められます。まず一案件に、仮説と、それを見直すための情報を残しましょう。
よくある質問
顧客から失注理由を聞けなくても分析できますか?
できます。理由は未取得と残し、結果通知や当時の提案・見積・商談記録から分かる範囲を整理します。顧客の発言がない欄を、社内の推測で埋めないことが大切です。尋ねる場合も回答は任意とし、正式な経路と開示できる範囲を守ります。
失注分析は何件集まれば始めてよいですか?
一件の記録から始められます。ただし、全体の傾向を判断できる一律の件数はありません。期間・商材・顧客層・対象の選び方、受注と失注の件数、理由の未取得件数を示し、少数例をチーム全体の原因へ広げないようにします。
Your next note
ミナトの答えではなく、あなたの一件へ。
今日ノートへ書くのは、次の一行だけでも構いません。持ち帰る候補を端末内へ残し、明日の商談で試すかどうかは後から選べます。
明日の一件で、ひとつ試してみたい問いを選んでください。
マイ商談ノート
今日、残しておく候補
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まだ保存していません。
自分の場面を「事実・解釈・未確認」の三欄へ書き直すなら、五冊目の読者ケースを使う。 送信せず、この端末だけで使えます。

