営業の振り返りは、起きた事実・相手の言葉・自分の判断・次に試す一つを分けて書きます。誰かに見せる場合は、5項目目に共有範囲を加えます。 分かったことと未確認を残し、次の商談で確かめることを決めましょう。
顧客への訂正や急ぎの対応があるときは、そちらを先に済ませてください。ここでは一回の商談を振り返ります。一日全体の報告は「営業日報の書き方」、複数案件の傾向を調べる方法は「失注分析の進め方」で扱います。
営業の振り返りシート|5項目のテンプレート

商談直後は事実と相手の言葉を残し、落ち着いてから当時の判断と次に試すことを追記します。後で知った情報には「後日確認」と付け、商談中の情報と分けましょう。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 1. 起きた事実 | 日時、商談の段階、決まったこと。受注・保留・失注を区別する |
| 2. 相手の言葉と未確認 | 実際の発言、そこから考えた仮説、まだ分からないこと |
| 3. 自分の判断 | その場で知っていた情報、考えた選択肢、実際に選んだ行動 |
| 4. 次に試す一つ | どの場面で、何を変え、何を観察するか |
| 5. 共有範囲 | 誰に見せるか、伏せる情報、確認者、保存や見直しの期限 |
個人メモなら5は「共有なし」で構いません。ただし、保存先は会社の規程に従います。発言を正確に覚えていないときは、原文のように引用せず「発言の要旨」と書いてください。
コピーして使う振り返りテンプレート
一件の商談を振り返る5項目
【1. 起きた事実】
日時・商談の段階:
決まったこと/決まらなかったこと:
【2. 相手の言葉と未確認】
発言(原文か要旨かを明記):
自分の仮説:
まだ確認できていないこと:
【3. 自分の判断】
当時知っていた情報:
考えた選択肢と実際に選んだ行動:
【4. 次に試す一つ】
場面:
試す行動:
観察すること:
【5. 共有範囲】
共有先/残す情報/伏せる情報/確認者/見直し日:
営業の振り返り例|失注理由を事実と推測に分ける

料金と機能の説明後に見送りの連絡があった、架空の商談例です。
架空の記入例:運用への不安が残った提案
1. 起きた事実:提案後のメールで「今回は見送ります。今の体制で運用できるか不安です」と返答があり、失注となった。
2. 相手の言葉と未確認:運用体制への不安は、本人の発言として確認できた。「価格が高かったのでは」は自分の推測。価格・時期・他社比較が判断に与えた影響は未確認。
3. 自分の判断:商談中は利用者が誰かを把握していなかった。利用体制を聞くか、機能説明を続けるかで迷い、後者を選んだ。
4. 次に試す一つ:次の似た案件では、機能説明に入る前に「導入後は、どなたが主に使う予定ですか」と尋ねる。利用者が決まっているか、未定かを記録する。
5. 共有範囲:会社で認められた記録先に保存。上司との振り返りに必要な範囲だけを共有し、研修資料や社外の記事への転用は別途確認する。
確認できたのは「運用体制への不安が示された」ことです。運用だけが失注原因だったとも、価格は関係なかったとも断定できません。 顧客が述べた理由と、こちらの推測を分けて残します。
返答が「検討します」なら、失注と決めず保留として記録します。また、見送り後の顧客へ振り返り目的だけで連絡を重ねず、ここで決めた質問は次の案件で試します。競合との比較が明らかな案件は「競合に負けた商談の振り返り」も参考になります。
営業の振り返りを次の商談に生かす|行動を一つ決める

「説明力を上げる」だけでは、商談中に何を変えるか分かりません。先ほどの例なら、次の3欄で行動を決めます。
| 決めること | 記入例 |
|---|---|
| 試す場面 | 次の似た案件で、機能説明に入る前 |
| 試す行動 | 主な利用者が誰かを一問聞く |
| 観察すること | 利用者が決まっているか。未定なら、誰が決めるかも未確認として残す |
次の振り返りでは、「質問できたか」と「どんな返答だったか」を分けます。聞けなかったときも、時間不足や相手が説明を求めたことなどを残し、試す場面を調整します。一度の成功や失敗で質問の効果を決めないようにしましょう。
3分だけ練習するなら、直近のメモから「もっと」「しっかり」「頑張る」を一つ選び、この3欄へ書き直してください。質問が浮かばない場合は「営業ヒアリングの質問例」、商談中に事実を残す方法は「商談メモの取り方」へ進めます。
営業の振り返りで反省が止まらないとき

「あの一言がなければ」と考え続けるときは、次の四つを順に確認します。
- 何が起きたか。 日時、発言、決まったことを記録する。
- 自分は何を選んだか。 実際に取った行動を一つ書く。
- その時、何を知っていたか。 後日分かった情報と分ける。
- 次に同じ場面が来たら何を変えるか。 試せる行動を一つ決める。
1〜3は過去の記録、4は未来の案です。「聞いていれば受注できた」という想像を、起きた事実に加えないようにします。予算の締切や担当者の異動など、自分では変えられない条件も記録には残せますが、自分だけの反省点にはしません。
同じ反省を何度も書く、誰かの人格を責め始める、気分が落ちるだけで次の行動を考えられない。そんなときは、いったんノートを閉じてください。仕事の負荷や生活への影響が続く場合は「営業でメンタルがきついとき」、仕事との相性まで悩む場合は「営業に向いていないと思ったら」で整理できます。
結果を知った今の視点で、過去を書き換えないために
失注は外部のせい、受注は自分の力、と結果によって説明を変えていないかも見直します。この偏りは自己奉仕バイアスの解説で扱っています。
ミナト
結果を知った今なら、正しい質問はいくつも浮かびます。
商談中の僕に見えていた範囲から、書き直します。
ソウタ
結果を知っている人が、あとから正解だけを言うのは簡単だ。
その時に何が見えていたかを聞かないと、次の人も同じ場面で選べない。
営業の振り返りにKPT・YWTを使う場合

職場の様式があれば、そのまま使えます。KPTとYWTでは、各欄の意味に合わせて記入しましょう。
| 枠組み | 三つの項目 | 営業で書くときの注意 |
|---|---|---|
| KPT | Keep:続けたいこと/Problem:問題だったこと/Try:次に試すこと | Keepには良かった行動も残す。Problemを人の性格や能力の評価で終えない |
| YWT | やったこと/わかったこと/次にやること | 「わかったこと」に自分の気づきを書く場合も、顧客が実際に話した理由とは区別する |
KPTの分類はIPAのワークショップ実践ガイド(誌面25ページ)、YWTの考え方は開発元のJMACによる解説で確認できます。YWTはJMACの登録商標です。
どちらを使う場合も、発言の出所、未確認、当時の情報を残します。共有範囲は別欄で確認してください。この記事の5項目は、営業の一件を記録しやすくするための編集上の提案です。
営業の振り返りをチーム共有・事例公開するとき

個人メモ、上司とのレビュー、社内研修、Web公開では、必要な情報が違います。共有先を決めてから、次の点を確認します。
- 本人と共有範囲を決める。 失敗した本人が残す情報・伏せる情報を確認し、公開しない選択も尊重する。
- 第三者の情報を別に確認する。 書き手の了承だけで、顧客・同席者・所属会社の情報まで使えるとは判断しない。
- 名前以外の手がかりを見る。 地域、時期、役職、金額、珍しい発言などの組み合わせにも注意する。
- 後から直す手順を決める。 確認者、保存期間、訂正や非公開の相談先を明確にする。掲載責任は編集側に残る。
氏名を消しても、ほかの情報と容易に照合して個人を識別できる場合があります。個人情報保護委員会の通則ガイドライン「個人情報」を起点に、個別の公開可否は社内の法務・個人情報保護担当へ確認してください。ここでの情報削減を、法令上の「匿名加工情報」と同じものとして扱いません。
契約上の守秘義務や社内規程も別途確認が必要です。個人データの提供を伴う場合の同意・例外・確認や記録の扱いは、通則編と第三者提供時の確認・記録義務編を参照して担当者に判断を委ねます。
録音、文字起こし、CRM、生成AIへ記録する場合も、承認された保存先か、誰が閲覧できるか、修正・削除できるかを確認します。録音時の同意やデータの学習利用・委託先が不明なまま、顧客情報を外部サービスへ入力しないでください。
物語で読む:失敗を記事にする責任
仮編集室では、カナエとソウタが公開範囲を、本人だけ、確認者を限った共有、社内研修、社外公開の四段階に分けました。段階を進めることを目標にせず、本人の選択と第三者の保護を確かめます。
カナエ
失敗を隠さないことと、本人から失敗を取り上げることは別ですね。
公開する範囲も、本人が選べるようにしたいです。
会議の終わりに、柏木はホワイトボードに書かれていた最初のサイト名案に、赤鉛筆で一本の線を引いた。まだ、中心に置く言葉が違う気がしたからだ。
その時、物件管理を担当する伊吹から、古い一室の改装を進めてよいという連絡が届いた。名前はまだ決まっていない。それでも、失敗を扱うルールと、集まるための部屋は同じ日に輪郭を持ち始めた。
一件の記録を後輩へ渡す場面は、高瀬が失った顧客で読めます。
書籍の購入先を確認する
よくある質問
受注できた商談も振り返った方がよいですか?
受注した商談も、何をしたか、顧客が何を判断材料にしたかを分けて残せます。結果が良かっただけで自分の行動すべてが適切だったと決めず、続けたい行動と、契約後に確認することを記録しましょう。
Your next note
ミナトの答えではなく、あなたの一件へ。
今日ノートへ書くのは、次の一行だけでも構いません。持ち帰る候補を端末内へ残し、明日の商談で試すかどうかは後から選べます。
明日の一件で、ひとつ試してみたい問いを選んでください。
マイ商談ノート
今日、残しておく候補
気になった項目を、この端末のブラウザへ保存できます。ログインや送信はありません。
まだ保存していません。
営業の振り返りの3分練習:曖昧な反省を具体化する
自分の場面で確かめる一問を書く
- 「もっと」「しっかり」で終わった反省を一つ選ぶ。
- 本文の三欄に沿って、試す場面・自分の行動・観察することを具体化する。
- 次の一件で確かめたいことを一問にする。
同じ反省を繰り返すだけになったら、いったん閉じて構いません。
顧客名や秘密情報は書かないでください。保存ボタンを押した一問だけを、この端末の商談ノートへ残します。
保存した一問を見返す自分の場面を「事実・解釈・未確認」の三欄へ書き直すなら、五冊目の読者ケースを使う。 送信せず、この端末だけで使えます。



