HIBI SELECTの木のカウンターで、レン、ソウタ、黒田が、入荷遅延の確定情報・未確定情報・代替案を表す三つの無文字カードと予約商品を確認する場面
すべてが決まるまで待たず、決まったこと、決まっていないこと、選べることを同じ連絡に置く

Season 3 / Episode 08

間に合わせると言って遅れるより

水曜には届かない。金曜は、まだ分からない。黒田は十八件の売上見込みから手を離し、十四時を待たない連絡を選んだ。

Scene 01

水曜に届かない。金曜は、まだ分からない。

火曜の午前九時二十分。株式会社ネクスディストリビューションの配送センターで、水曜着の札が付いたケースだけが前の中継拠点に残っていた。

中身は、HIBI SELECT本店が予約を受けた布張りの新色ノート十八冊だった。店舗到着は水曜午前、予約客への案内は金曜から。贈りものにする人も、自分の仕事用に待つ人もいる。

配送統括部長の長谷川 和人は、予定便の積替締切を過ぎ、水曜午前の店舗到着が不可能になったことを確認した。ケースが中継拠点を出ていない理由、次の便、十八冊を全量載せられるかは確認中だった。

長谷川

水曜午前には届けられません。ここは確定です。

金曜便は、十四時の配車確認まで言えません。

九時四十分、長谷川はHIBI SELECT本店の黒田 由里へ電話した。黒田は受話器を置かず、「確認中」の欄を見た。

黒田

水曜に来ないことだけを、今お客様へ伝えるのですか。

十四時まで待てば、金曜と案内できるかもしれません。

長谷川

金曜と決まれば更新します。ただ、店舗から連絡する時刻は、私が決めることではありません。

今言えるのは、水曜不可と、十四時まで確認中という状態です。

長谷川は、原因も金曜も埋めなかった。入荷不可を店へ渡し、配送側の確認先と十四時の時刻を記録した。

黒田は予約台帳の横に、十八件分の売上見込みを書いた。十四時まで待てば、午前中はその数字が残る。

Scene 02

黒田が、十四時を待たないと決める。

開店前のHIBI SELECT本店で、黒田とレンは予約台帳を開いた。連絡先と受取希望は予約対応だけに使い、閲覧者、保管期限、訂正・削除の手順を決めている。贈答日や取消履歴を、販促や担当者評価へ流さない。

受取日を決めていない人が七人。金曜か土曜を希望する人が六人。日曜に贈ると伝えた人が五人いた。

レンは倉庫から、同じ紙と製本で、表紙色だけが違うノートを七冊運んだ。価格は新色と同じで、今回の予約条件と店長承認なら変更手数料も取消手数料もかからない。

レン

同じ紙と綴じなら、既存色が七冊あります。

でも、新色を待つ理由までは、こちらで決められません。

分納や個別配送は、長谷川の確認前には選択肢にできない。安全、健康、法的期限、重大な契約影響がある遅延なら、通常の店舗連絡で閉じず、責任者と専門経路へ上げる。今回は、十八人が自分の受取予定を選び直す材料をそろえた。

送信画面には三つの案が残った。十四時まで待つ。金曜入荷の見込みを書く。水曜不可、金曜未確定、待つ・既存色へ変える・取り消すという今できる選択、十四時三十分の更新を送る。

黒田は、十八件の売上見込みに指を置いたまま言った。

黒田

今送れば、別の店へ行く方がいます。月の数字からも消えます。

でも、十四時までの四時間あまりは、お客様の予定から減るんですね。

予約台帳の裏には、仕入れと人件費の支払日も書かれていた。損失回避という一語では、店を続ける責任は消えない。

ソウタ

取消が出ても、今知らせますか。

黒田は「金曜入荷見込み」を削除した。十四時待ちの下書きも閉じ、三つ目の案を自分の送信画面へ戻した。

Scene 03

九時五十五分、黒田が送信する。

黒田は、水曜不可の根拠を長谷川へ再確認した。レンは既存色七冊を数え直し、来店までの取置時間と、色を見て変更しない選択も残した。

ご予約いただいた布張りノートについて、当店がご案内していた水曜午前の入荷ができないことが分かりました。金曜からのお受け取り予定を変更していただく可能性があり、申し訳ございません。新しい入荷日と十八冊が同じ便で到着するかは、現在確認中です。現時点では、予約を維持してお待ちいただく、同じ紙と製本の既存色に変更する(店頭在庫七冊)、手数料なく予約を取り消す、の三つをお選びいただけます。本日十四時三十分までに、入荷日が未確定の場合も黒田から状況をご連絡します。ご希望の受取日や贈答日への影響があれば、こちらの文面に返信いただけます。

HIBI SELECTが九時五十五分に送った予約客向け連絡

九時五十五分、黒田は承認済みの個別送信経路から十八人へ送った。宛先を一つの欄へ並べない。送信した時刻は残すが、送信成功、到達、既読と同じには数えない。エラー時も、本人が予約時に指定した別の連絡方法だけを使う。

黒田

送信します。取り消しが届いても、十四時まで待てばよかったことにはしません。

長谷川

配送側は、九時二十分の記録を消しません。

新しく分かったことを、分かった時刻で追記します。

水曜不可の横には長谷川の確認時刻、既存色の横にはレンが数えた七冊、取消条件の横には黒田の承認が残った。

Scene 04

三分後、最初の取り消しが届く。

九時五十八分、日曜に贈る予定だった人から返信が届いた。

早めに分かったので、今回は取り消して別の贈りものを探します。次の入荷を待つことはできません。

予約客から届いた最初の返信

黒田は引き止め文を書かなかった。今回の予約条件に従って手数料なく処理し、完了を返信した。一件分の予約売上見込みを台帳から外す。予約、入金、返金がある場合の会計記録は同じ数字にしない。

二件目は、既存色を店頭で見てから決めたいという返信だった。三件目は、新色の入荷日が分かるまで待つと答えた。

黒田

取り消しが届くと、待てばよかったと一瞬思います。

でも、この方は今、別の贈りものを探せます。

十二時までに、取り消し三件、既存色への変更希望四件、新色を待つ六件、未回答五件になった。待つ六人のうち常連は二人いたが、好意や次の購入には数えない。一人は仕事の区切りに使いたいと書き、もう一人は急がないので日付だけ知りたいと返した。

未回答の五人も、到達、既読、同意を意味しない。予約時に示した条件の範囲で既定状態を維持し、新たな課金や同じ連絡の反復をしなかった。

ソウタ

取消三件は、失敗でも成功でもありません。

今見えるのは、四つの状態だけです。

十四時十分、長谷川から連絡が入った。ケースは木曜夜の便に載り、金曜午後に店舗へ到着すると確定した。ただし、十八冊という出荷記録と、店舗で受領する現物数量は同じ確定ではない。

長谷川

金曜午後の店舗到着は確定しました。

十八冊の現物は、店舗の受領確認まで確定にしません。

黒田は十八人全員へ更新を送った。「金曜午後に店舗へ到着」と「金曜午後から十八人全員へ渡せる」を分け、受領後に個別の受取可能時刻を知らせると書いた。

Scene 05

閉店後も、十八冊の現物は未確認だった。

閉店後、黒田は予約十八件を売上見込み一つへ戻さなかった。取り消し三、変更希望四、待つ六、未回答五を別の行に置く。遅延を知った九時二十分、店舗へ渡った九時四十分、最初に送った九時五十五分、更新が届いた十四時十分も並べた。

レン

待つ六人を美談にしなければ、次に直せるのは店の連絡ですね。

ノートを選ぶ理由は、受け取る方のまま残せます。

黒田

売上を守りたい気持ちは、なくなりません。

だからこそ、予約の数字にお客様の予定を混ぜない記録を残します。

黒田は、連絡先と返信を予約対応の目的に限り、閲覧者と保管期限を記録へ付けた。遅延客を将来の販促対象や担当者評価へ自動追加しない。文案生成を試す場合も実在の氏名、連絡先、贈答日、購入履歴を入れず、入荷日、在庫、補償、原因、宛先を補完させない。

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最後に黒田は、予約条件の欄へ一行を書き足した。

入荷予定が変わった場合の連絡方法と、待つ・変更する・取り消す条件を、予約時に一緒に確認する。

HIBI SELECTの予約受付表に加えた確認

金曜午後、十八冊が届くか。変更を希望した四人は、本当に別の色を選ぶか。取り消した三人が次に来るか。まだ、どれも結果にはなっていなかった。

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